精神医学

続発性うつの原因

今回はうつ状態を引き起こす原因について紹介します。

軽度なうつ状態を含めると、皆さんも様々な原因で経験があるはずです。

歯の痛み、お腹の不調、風邪気味のときなど、さまざまな場面で気分の落ち込みを感じことがあるのではない
でしょうか?

人間という生き物は些細なきっかけでうつ状態に傾きうる存在であり、そういう意味では、あらゆる疾患がうつ状態を引き起こしうるのです。

ただ、それでは全く芸がなく、臨床においても活用しようがないですよね。なので、特に問題になるうつ状態の原因について以下で解説したいと思います。

身体疾患以外の続発性うつの原因:物質乱用と処方薬

まずは、しっかりおさえておく必要があるのが、「臨床における続発性うつの原因は、身体疾患を除けば物質乱用と処方薬が大半である」ということです。

①物質乱用:

物質乱用のなかで、うつ状態を惹起することが圧倒的に多いのはアルコールの乱用です。その他の違法薬物などももちろん原因にはなりますが日本では少ないでしょう。

アルコールの乱用がある場合は、まずそれを取り除くことが不可欠です。

依存状態である場合や、飲酒歴が長い場合は、うつ状態を含めて以下のような様々な問題が起きます。

  • うつ
  • 認知機能低下(アルコールそのものの毒性、ビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症)
  • 肝障害
  • 身体依存形成による離脱症状

これらの場合はとにかく断酒を推奨し、場合によっては断酒病院への誘導も必要です。

②処方薬

処方薬で最も重要なのは、ステロイドです。ステロイドはうつ状態、躁状態どちらの原因にもなりますし、高用量(臨床上よくいわれるのはPSL40㎎以上)であれば、精神病症状も含めどのような精神症状が生じてもおかしくはないとされます。

その他の関連する薬剤を列挙すると、枚挙にいとまがありませんが

プロメタジンなどの神経遮断作用のある制吐薬、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン薬(特にクロナゼパム)、クロニジンなどの高アドレナリン薬、シメチジンのような抗ヒスタミン薬、テトラサイクリンなどの抗菌薬の一部、カルシウムチャネル拮抗薬のような降圧薬、インターフェロン製剤、抗HIV薬、経口避妊薬などはいくらかのリスクがあるようです。

しかし、臨床で特に問題になるのはやはり、とにもかくにもステロイドです。ステロイドの減量が困難な場合は一時的に薬剤での症状抑制や、精神科病床での療養が必要になることもあります。

続発性うつの原因となる身体疾患

ずばり、うつ状態が頻発する3大疾患は心疾患、神経疾患、内分泌疾患です。

最も有名なのは、内分泌疾患のなかでも甲状腺機能低下症ですね。しかし、その他の疾患についてはあまり意識されないことのほうが多いのではないでしょうか?

身体疾患によるうつ状態は見過ごされやすく、ケアされづらいという特徴があるためしっかり関連を見抜いて適切なケアを行うことが重要なのです。

①内分泌疾患

最も有名なのが前述のとおり、甲状腺機能低下症です。うつ状態の患者では必ず甲状腺機能を評価する必要があります。軽度の低下でうつ状態をきたす人がいることには注意が必要です。

その他に副腎皮質機能低下によるうつ状態が起こることがありますが、その場合はたいてい他の身体所見も現れると思われます。不顕性副腎不全といわれる状態では重度の夏バテ(ストレスに対してコルチゾールが十分に分泌されないため)をきたし、うつ状態と見分けがつきづらい場合もあるようです。

②心疾患

うつ状態は心疾患の危険因子である一方で、心疾患の結果として生じることもあるといわれています。

③神経疾患

うつ状態を引き起こす代表的な神経疾患は、多発性硬化症、Alzheimer型認知症、Parkinson病、脳梗塞、てんかん、です。

この中で最も頻繁にうつ状態を引き起こすのは、てんかんであるといわれている。発作と関連してうつ状態となる場合もあるし、発作間欠期に起こる場合もあるようです。

Alzheimer型認知症では、病初期にうつ状態となることがよくあるとされており、うつ病による認知機能低下との鑑別が問題になる場合があります。

うつ状態の原因をできるかぎり同定する

いかがでしたでしょうか。

古来より、精神疾患の基本的な考え方は「外因⇒内因⇒心因」であるといわれています。

外因とは、つまり身体疾患や物質使用などの除去可能な原因を指しています。外因があるのであれば、外因を取り除くことが先決であると昔から伝わっているんです。

特に、精神科としての教育を受けていない先生は、ついつい心因に飛びつきがちだと思いますが、心因はその他の因子を注意深く除外した上でようやく扱うものであるこということをわかっていただければ幸いです。

そして、精神科医は病院の誰よりもこれらの因子に深い造詣をもっておくべきではないかと思います。